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糖鎖にまつわる注目ニュース

現在も糖鎖にかんする様々な研究が日々進められています。このページでは、糖鎖にまつわる注目ニュースをまとめてみました。少し難しい内容もありますが、今後私たちの生活を変えるかもしれない糖鎖にまつわる情報をぜひチェックしてみてください。

最近少しずつ認知度が上がってきた糖鎖ですが、まだ明らかになっていないことがたくさんあるんですよね。

そうですね。日本でもたくさんの研究者が研究を進めているところです。

ここでは、そんな糖鎖にまつわるニュースをいくつかご紹介します。

糖鎖にかんするニュースまとめ

加齢と食環境で糖鎖が変化することを証明(2020年8月)

近畿大学薬学部(大阪府東大阪市)創薬科学科薬品分析学研究室教授の鈴木茂生、准教授の木下充弘らの研究グループは、遺伝子、タンパク質に続く第3の生命鎖と呼ばれる 「糖鎖」 が、加齢によって変化すること、特に糖鎖末端に存在するシアル酸※1が加齢によって顕著に変化することを明らかにしました。

引用元:加齢と食環境によって体内の「糖鎖」が変化することを証明 糖鎖を軸とするアンチエイジング研究への展開に期待:紀伊民報AGARA

これまで糖鎖の変化が疾患の発症と関係しているということが、様々な研究により明らかになっています。加齢性や老年性の疾患と糖鎖の関係は解析が難しく、あまり活発な研究は行われていませんでしたが、今回その一部が明らかになり、アンチエイジング研究への展開に期待が高まっています。

今回の研究では、糖鎖とその一部であるシアル酸が加齢によって変化をすることがわかりました。さらに、この加齢によるシアル酸の変化には、カロリー制限や高脂肪食を摂取することによって大きな影響を受けるということも明らかになっています。

名古屋大・岐阜大の新法人発足 糖鎖分野の共同研究が進む(2020年4月)

大学総括理事・副機構長となった森脇久隆・岐阜大学長は、統合により「糖鎖」(鎖状の糖の構造や性質を調べて創薬などに応用する研究開発)分野の共同研究が進むと強調。

引用元:新型コロナ対応に「基礎研究で貢献を」 名古屋大・岐阜大の新法人発足(THE PAGE) - Yahoo!ニュース

名古屋大学と岐阜大学が経営統合し、国立大学法人「東海国立大学機構」が発足しました。両大学の統合によって、今後は糖鎖にかんする共同研究が進むと発表しています。

糖鎖研究センターでウイルス感染症の研究も行う岐阜大学と、糖鎖の臨床研究で大きな力を持つ名古屋大学。共同研究拠点ができることで、糖鎖の研究がより活発に行われるようになると期待が高まっています。

肝細胞がんの診断に利用できる抗体の産生を可能に(2020年3月)

国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)生物プロセス研究部門【研究部門長 鈴木 馨】バイオデザイン研究グループ 奥田 徹哉 主任研究員は、生体分子の一つである“糖鎖”を認識する抗体の作製を容易にする化合物(人工糖脂質)を開発した。

引用元:産総研:疾患の要因となる“糖鎖”を認識する抗体を作るための化合物を開発

国立研究開発法人 産業技術総合研究所が、糖鎖を認識する抗体の作製に役立つ人工糖脂質を開発したというニュースです。また開発した人口糖脂質を用いることで、肝細胞がんの診断に利用できる抗体を産生できるということを、富士フイルム和光純薬工業株式会社と共同で発表しています。

疾患の状態を把握するためのマーカーとして役立つ糖鎖。その糖鎖を認識する抗体が簡単に開発できるようになれば、新たな診断薬やワクチンの開発が進むことが期待できます。

膵臓癌の進行を抑える目印を発見(2019年12月)

東京都健康長寿医療センターの石渡俊行研究部長、豊田雅士研究副部長、佐々木紀彦係長級研究員らは東海大学医学部の平林健一准教授、日本獣医生命科学大学の道下正貴准教授らと共同で、細胞表面の糖脂質*1の1種であるガングリオシドGM2*2が膵臓がんの増殖、浸潤、進行度と関連していることを発見しました。

引用元:「膵臓がんの進行を食い止める糖鎖の目印を発見」|地方独立行政法人

高齢者を中心に増加している膵臓がん。進行スピードが速く、早期では自覚症状が現れにくいため、がんが発見された時にはすでに治療が難しいということも少なくありません。

この研究結果は、膵臓がんの早期発見および進行を抑えるための新たな治療法開発に貢献すると期待されています。

創価大学八王子キャンパス「糖鎖生命システム融合センター」を設立(2019年4月)

創価大学(東京都八王子市/学長:馬場善久)は、2019年4月1日(月)に創価大学八王子キャンパスにおいて、「糖鎖生命システム融合センター」を設立致しました。当新センターは糖鎖生物学と糖鎖情報科学を融合した新規学術分野の創生を目指した研究拠点となります。

引用元:糖鎖生物学と糖鎖情報科学が真に融合した新しい学術分野を創生する「糖鎖⽣命システム融合センター」 が創価大学に誕生!|学校法人創価大学のプレスリリース

創価大学には、糖鎖生物学・糖鎖情報学の研究で成果を上げている研究者が在籍しており、今回より飛躍的な成果を目的として、「糖鎖生命システム融合センター」を設立しました。

世界的にも研究者の数が少ない糖鎖情報科学の研究も行っており、今後の成果が世界の糖鎖研究に大きく貢献するものになると期待が高まっています。

精神的ストレスで特定の糖鎖が減少することが明らかに(2018年10月)

農研機構は、産業技術総合研究所・茨城大学・東京大学との共同研究で、精神的ストレスを負荷したマウスでは、小腸の内壁を覆う腸管上皮細胞1)において特定の糖鎖2)(フコシル化糖鎖3))が減少することを初めて明らかにしました。

引用元:(研究成果)精神的ストレスは腸管上皮の糖鎖構造を変化させる | 農研機構

精神的ストレスは、腹痛などの不快感を引き起こします。さらにその不快感に脳はストレスを感じて、症状が悪化するという悪循環に陥ります。

今回の研究では、腸管上皮細胞にある糖鎖に着目。マウスの糖鎖を解析した結果、精神的ストレスによって糖鎖の一部が減少することが明らかになりました。

この研究結果は、今後腸内細菌・腸・脳相関のメカニズムを解明する手がかりになると予想されます。

理化学研究所が肥満を抑える糖鎖を発見(2017年1月)

理化学研究所(理研)グローバル研究クラスタ疾患糖鎖研究チームの蕪木智子客員研究員、木塚康彦研究員、北爪しのぶ副チームリーダー、谷口直之チームリーダーらの研究チーム※は、マウスを用いて、「α2,6シアル酸[1]」と呼ばれる糖を持つ糖鎖[2]が肥満を抑えることを発見しました。

引用元:肥満を抑える糖鎖を発見 | 理化学研究所

理化学研究所の研究チームは、高脂肪食を与えて肥満にしたマウスの脂肪組織を調べた結果、糖鎖には肥満を抑える働きがあるということを発見しました。

現在、日本の肥満者数は増加傾向にあります。糖尿病や動脈硬化など肥満に関係する疾患において、糖鎖の研究が今後新たな治療法の開発に役立つと期待されています。