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糖鎖異常が起きるとどうなる?

病気と糖鎖異常の間には、深い関係があることがわかっています。たとえば細胞が癌化した場合などには、その細胞の糖鎖は大きく、長く変化します。形は違いますが、こういった糖鎖の変化は、さまざまな病気で確認されています。このページでは、そうした糖鎖異常と病気の関係についてまとめています。

糖鎖って、ものすごくたくさんの種類があるんですよね。こんなにたくさんあるのに、1つも組み合わせを間違えないなんて不思議です。いつか変な風にくっ付いてしまわないか、不安なくらいですよ。

じつは、すべての糖鎖が間違いなく組み合わさっているかというと、そういうわけでもないのです。たとえば細胞ががん化すると、糖鎖の大きさも構造も変化して、体に牙を剥きます。

ほら、不安的中じゃないですか!

糖鎖異常と病気の関係というのは、じつはまだ解明されていません。しかし多くの場合、病気になると細胞の糖鎖に異常が見られることがわかっています。今回は、そんな糖鎖と病気の関係について見ていきましょう。

まずは糖鎖の働きをおさらい

糖鎖は、主に細胞の表面に表れ、細胞間のコミュニケーションを行う重要な物質です。

糖鎖という名前の通り、その正体は糖が鎖状につながったものなのですが、この組み合わせが1つ違うだけでも、人の身体は正しく機能しなくなってしまいます。

たとえば、血液。人の血液型というのは、赤血球についている糖鎖の、末端にある1つの糖で決定されています。よく、違う血液型の人の血は輸血できない、と言いますが、あれはこの僅かな糖鎖の違いを見分けて、免疫系が攻撃をしてしまうからです。

攻撃された赤血球は破壊され、血管の中で固まり、命に関わることにもなりかねません。

糖鎖の種類や役割は細胞によって違いますが、その働きはどれも体を正しく機能させるために不可欠なものなのです。

糖鎖は、タンパク質や脂質がもつ機能を高める、寿命を変化させる、輸送能を向上させるといった変化をもたらし、細胞の接着、移動、発生、分化、増殖、アポトーシス(細胞死)、感染、免疫といったさまざまな生命現象が円滑に営まれるようにはたらく。

引用元:変わる糖鎖の世界 | 特集記事 | NatureJapanJobs | Nature Research

それゆえ、糖鎖に異常がおきると、がん、糖尿病、肺気腫などのさまざまな病気が引き起こされるほか、糖鎖に関連する遺伝子異常によって、脳や神経、筋肉などに重篤な先天性疾患が起きることが知られている。

引用元:変わる糖鎖の世界 | 特集記事 | NatureJapanJobs | Nature Research

糖鎖異常が見られるさまざまな病気・症状

まだ詳細な仕組みはわかっていませんが、糖鎖異常と病気には、深いつながりがあることがわかっています。というのも、何らかの病気に罹ってしまった人の細胞を検査すると、その糖鎖に異常が見られることが多いためです。

以下に、糖鎖異常が見られる主な病気をまとめてみます。

関節リウマチ

糖鎖異常が関節リウマチにどう影響しているのか、というのはまだはっきりしていません。

しかし、関節リウマチになってしまった患者さんの血液には、免疫グロブリンGという抗体の糖鎖に異常が見られることがわかっています。その異常というのは、ガラクトースという糖の欠損です。

血液中にどれくらい糖鎖異常の免疫グロブリンGがあるか、というのは、リウマチの検査方法の1つにもなっています。

血液検査でリウマチ因子(R F)抗CCP抗体抗ガラトース欠損IgG抗体などを測定します。これらの検査で診断が可能な関節リウマチの方は約90パーセント程度と考えられています。

引用元:リウマチの検査方法

がん

がん化した細胞と正常な細胞では、糖鎖に違いが出ることがわかっています。がん化した細胞の糖鎖は長く巨大で、がん細胞が浸潤·転移するためのさまざまな働きを担います。

たとえば、通常の細胞は、分裂がある程度進むと止まります。これは、糖鎖によって、細胞分裂のアクセルとブレーキがコントロールされているから。

細胞ががん化すると、このアクセルとブレーキ、どちらかが壊れ、分裂し続けてしまうことになります。

糖鎖に異常が起きたからがん化するのか、がん化したから糖鎖に異常が起きたのかは、まだはっきりとはわかっていません。しかし、がんと糖鎖の間に深い関係があることは、間違いのないことと言えます。

細胞表面に発現する糖鎖は,細胞の癌化に伴って質的·量的に大きく変化するだけでなく,癌の浸潤や転移においても重要な役割を果たすことから,治療への応用に関心が高まっている1,2

引用元:糖鎖と癌治療

アルツハイマー

アルツハイマー病の原因は、アミロイドβというタンパク質(脳にある細胞のゴミ)が脳に溜まってしまうこととされています。

そして、アミロイドβの増加に関与していると思われるのが、糖鎖の異常。具体的にどう関係しているのかはまだわかっていませんが、細胞膜の表面にある糖鎖の一部が欠損することで、免疫系が誤作動を起こしているのではないかと考えられています。

トランスフェリンのシアル酸の変化についても、その原因がシアル酸を付加する酵素であるα-2,6 シアリルトランスフェラーゼが血液中で減少していることであることが示唆され、ADと糖鎖異常とは深く関連していると考えられた。

引用元:アルツハイマー病における糖タンパクの糖鎖異常の解析

不妊症

精子と卵子は、表面にある糖鎖でお互いを認識し、1回だけ受精します。糖鎖はいわば、鍵のような役目を果たしているわけです。

そのため、精子と卵子、どちらの糖鎖に異常があっても、受精はできません。

また、子宮内のコンディションも、糖鎖によって左右されています。糖鎖の異常がどう引き起こされるかはまだ不明な部分が多いのですが、加齢や偏った食生活、ストレスなどが影響しているのではないかと考えられています。

不妊の原因は様々で、未だ解明されていない事も多いのですが、糖鎖が正常に働いていないと妊娠の確率が低くなる事は紛れもない事実です。不妊の30~40%は糖鎖の異常が原因とも言われています。

引用元:不妊と糖鎖

まとめ

一見すると病気同士の関係はなさそうに見えますが、糖鎖異常がある、という点では共通しているんですね。

糖鎖は体中の細胞についていますからね。細胞の働きを左右する物質だけに、体に異常が出た場合は少なからず糖鎖にも影響が出ているでしょう。もしかしたら、糖鎖の異常が不調の原因かもしれませんが。

糖鎖異常を防ぐためには、どうしたらいいんでしょうか。

現在のところ、具体的な方法は見つかっていません。十分な睡眠、適度なストレスケア、栄養バランスの摂れた食事。こういったいわゆる「健康的な生活」が、おそらく一番効果的と思われます。

現代の日本では、しっかり自己管理しないとどれもけっこう難しいですね。長生きしたいので、できるだけがんばってみます。